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糸車

第6章 水泡


その途端に頭に忘れかけていた激痛が走った。

背中の痛みを我慢して、軍服を背中に当たる部分の畳に敷いて寝転がる。

秀吉も彼女も、なんなんだ。


「秀吉……。」

僕は精一杯やった。
秀吉に出会うまで、僕は自分の人生がわからなかった。
その時、夢を持つ秀吉に出会って、僕は変わったんだ。
それからの僕は必死だった。
唯一の友である秀吉のためになりたくて、頭を使った。
生来弱い体に鞭を打って日の本全土を剣を振るって駆け抜けた。
辛かったけど、それでも頑張ろうと思った。

だから、日の本統一を果たした時は、それはそれは嬉しかったんだ。

それなのに…それじゃ秀吉は足りないと言うんだね。
仮に朝鮮を手に入れたら?
今度こそは満足するのかい?
次には蒙古が欲しいと言うのかい?

僕が寝込んでいた数日間で、秀吉の達成感は消えてしまったのか?
その程度のものだったのか?

もうわからない。

朝鮮進出は反対だ、と言った時の秀吉の目は、友に向けられる目では無かった。
もしかして、友と思っていたのは僕だけか?

「……つまるところ、僕は、ただの軍師、か。」

実際に口に出してみると、今までの僕が思い上がっていただけのように思えてきた。

僕自身が必要とされていたのではなくて、僕の頭脳が必要とされていたのだろうか。

襲ってきた脱力感に、僕は目を閉じた。




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