第6章 水泡
彼女が立ち去った後、僕はしばらくぼんやりとしていた。
「あれは…なんだったんだ。」
正直あの彼女は狂人にしか見えなかった。
力が抜けて行く。
そのまま、げほ、と咳をして畳に寝転がった。
畳に触れた背中に鋭い痛みが走って、顔をしかめる。
あぁ、そうだ。
おそらく皮膚が切れているんだった。
再び起き上がって、上半身だけ軍服を脱いだ。
痛む部分をそっと指先で触れる。
「……っ。」
指先にはわずかに血がついていた。
痛みの割りにはあっけない出血ではあるが、軍服越しに爪が喰い込んでいたのに、皮膚が切れるまでとは。
鎖骨部分の白い皮膚は、彼女の親指の形で赤くなっていた。
「………。」
軍服を着直すこともせず、先程の彼女を思い出す。