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糸車

第5章 迷走


秀吉の部屋の前に立つ。

「秀吉、僕だ。
入っていいかい?」

「半兵衛か。入れ。」

襖の向こうから秀吉のくぐもった声が聞こえて、僕は襖を開けた。

秀吉は欄干に肘をついて、外の景色を見ていた。

「治ったのか?半兵衛。」

「あぁ、お陰様でね。
体が弱いというのは困りものだよ。」

そうか、と秀吉は洋風の〝そふぁ〟とやらに腰を下ろした。

さて、軍師としてはまだやることがある。

「秀吉。
まだこの日の本は統一されたばかりだ。
安定はしていない。
とりあえず反乱を防ぐために政治機関を各地に設置すべきだ。
とくに日の本の先端である奥州と薩摩は反乱が起こりやすいだろう。
そして離島である四国にも、一定の大きさの軍は敷く必要がある。」

壁にかけてある日の本全土が描かれた地図を剣で示しながら、僕は説明した。
秀吉は僕の話を黙って聞いていた。
その顔は険しい。
最初は僕の提案について思案しているのだと思ったが、明らかに目は僕の示す地図を見ていなかった。

僕は何か、間違ったことやおかしいことを言っているのか?

「…秀吉?
何か腑に落ちないことでもあるのかい?」

耐えきれなくなって質問すると、秀吉はうむ、と言って立ち上がった。

「…半兵衛。
我の夢は、まだ終わっていない。」

何を言われたかわからなかった。
秀吉の夢。
それは日本の統一だろう?
それは長い時間をかけて、やっと叶えることができたじゃないか。

「……え?
もうこの日の本は、全て秀吉が統一しているんだよ?」

秀吉は僕の手から関節剣を奪う。

「我が次に欲しいのは、ここだ、半兵衛。」

ゴン、と鈍い音をたてて秀吉が剣で示した地図の場所は、海の向こう。

離れ小島である、対馬と壱岐のその先。
日の本とは比べものにならない巨大な大陸の国の一つ。


「……っ、秀吉。
それは………朝鮮、かい?」

うむ、と再び秀吉は言った。

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