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糸車

第5章 迷走


目を覚ますと、彼女はいなかった。
今日こそはどうだろうか、試しに起き上がってみる。

僕の体はもうこの怠さに慣れてしまったのだろうか。
まだ怠さこそ残るが、不思議と辛くは無かった。
治った…とは言い難いが、もう大丈夫だろう。

しばらく腕を通していなかった白と紫の軍服。
それに着替えようと腰紐をほどいた時、コトンと音を立てて襖が開いた。

「半兵衛様、起こしに来まし……わっ!」

上半身をはだけた僕を見て、彼女はバタンと襖を閉める。
襖の向こうからごめんなさいぃ…と半泣きの声が聞こえた。

いつになったら耐性が出来るのだろうか。
男の上半身なんかに照れる必要なんて無いのに。

ひさびさに袖を通した軍服は僕の体にしっくりと馴染んでいる。
やっぱりこれだな、と思った。
関節剣を腰に刺す。
適度な重みに、気が引き締まった。

襖の向こうにいるだろう彼女に言った。

「もう大丈夫だ、入ってくれ。」

失礼します、と平然を装った彼女が入ってくる。
軍服を着た僕を見て、目を丸くした。

「半兵衛様、治ったのですか?
無理はしなくていいんですよ?」

大丈夫、今回はもう嘘ではない。

「あぁ、もう大丈夫だ。
今まで看病してくれてありがとう。
秀吉のところにいってくるよ。」

よかった…と彼女の声が聞こえた。
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