第4章 存在
「私は奥州の雪が見とうこざいます!」
「あそこは寒すぎるよ。
その前に越後の緑たちを見せてあげたいね。」
「四国には何があるのですか?」
「四国までは、船で行こうか?」
僕たちは思いつく限りの地名を言いあった。
会話は全く噛み合っても、現実的でも無かったけど、楽しかった。
あっという間に太陽は一番高くまで昇る。
僕たちの戦のせいで、ずっと大坂城にこもりきりだった彼女は、いろいろなところに連れて行ってやりたいと改めて思う。
彼女は僕に負担をかけないように小さな声で話し、時折僕が咳をすると優しく背中をさすってくれた。
「……戦がないとは、こんなにものどかなことなのですね。」
「そうだね。全く同感だ。」
昨夜は疑いかけた天下統一も、彼女の言葉で間違っていなかったと思える。
「僕たちは秀吉に感謝しなくてはならないね。
こんなにのどかな時間をくれたんだ。」
「もちろんです。
ですが半兵衛様、貴方がいなくては、天下統一はならなかったでしょう。」
「…ありがとう。」
彼女はこうして、僕が歩んできた道を否定しないでいてくれる。
やっぱり彼女がいないと、僕はダメみたいだ。