第2章 兆候
「あぁ、ありがとう。
僕が最前線にいながら不思議と死なない気がしていたのは、君という僕の帰りを待っていてくれる存在がいたからかもしれないね。」
そう言うと、彼女は笑ってくれた。
「私も心配はしていましたけど、どこかで半兵衛様が死なないとは確信していたような気がするのです。
戦が終わったからこんなこと言えるのかもしれませんが。」
「僕を信じていてくれて、ありがとう。」
「これからも信じますよ?」
イタズラっぽく笑う彼女の目からは、死線に立つ恋人の生還をひたすら信じ続け、祈り続けた強さは消えて、代わりに恋人の自分に対する愛を信じる強さに変わっていた。
「あぁ、当然だ。
ここまで僕を愛してくれる人を、僕はやすやすと手放せないね。」
「一生、尽くさせていただきます。」
彼女はかしこまって、わざと恭しく三つ指をついた。
それから急に顔つきを変える。
「さて、おふざけはここまでにして、半兵衛様、そろそろお休みになりましょうか。」
「ああ、そうだね。」
あんな会話をした後だ。
頼み込めば、添い寝なんかしてくれるだろうか?
「ねぇ、添い寝はしてくれるのかい?
愛する恋人が病床に臥せっているんだ。」
彼女はキッと僕を睨むと、黙って僕にかかっていた着物を掛け直した。
「そんなにお寒いなら、あと30枚くらい着物を重ねましょうか?」
「……手厳しいね。」
彼女の看病を受ける日々…悪くない。