第2章 兆候
しばらくして、彼女は戻ってきた。
起き上がろうとする僕を制して、枕元に正座をする。
彼女は少し怒っているようだった。
「半兵衛様。半兵衛様はもう少し自分のお体を大事にされるべきでは?」
「それは昨晩のことかい?」
からかってやると、彼女は顔を真っ赤にして人差し指で僕の頬を叩いた。
「真面目に言ってるんですよ!私は!
だいたいですね、半兵衛様。
奥州に行かれた次の日に安芸を目指すような方、私は聞いたことありませんよ!」
「…そうだねぇ。」
実際に体調を崩してしまった今、彼女に言い返すことはできなかった。
「秀吉様も呆れてましたよ、だから休めと言ったのに、と!
というわけで、半兵衛様。
しばらくはこの部屋から出しませんよ!」
昨晩の恥じらいはどこにいったのか、彼女は早口でまくし立てて、先ほど傍においた鍋に手を伸ばした。
「ほら、お粥。作ってきました。」
「君の手料理か…それはありがたい。」
起き上がろうとして、再び制される。
「いや、流石にこれは起き上がらないと無理だろう?」
「いいえ。
体を横向きにすれば大丈夫です。」
「…食べさせてくれるのかな?」
「特別ですよ。ほら。」