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糸車

第2章 兆候


目を覚ますと、腕の中に彼女はいなかった。
よくこんなにも上手に腕の中を抜け出したものだ。

鳥の鳴く声と、差し込む暖かな太陽の光。
しかしどこか爽やかな気分ではなかった。

昨晩、少し我を忘れすぎただろうか。
うなされたわけでも無いのに、ひどく寝汗をかいていた。
べったりと着物が肌に張り付いている。
心なしか体も少し熱い。
熱でも出てしまったのだろうか。

だとしたらおそらく、秀吉の日の本統一という夢が叶って一気にガタが来たのだろう。
昔から悩まされて来た自分の体の弱さにため息が出た。

まぁ、戦中で無いだけマシだろう。

立ち上がる気力もなくて、上体のみを起こして大坂城からの景色を眺めていると、するすると襖が開いた。

わずかに開いた隙間から覗く指で、彼女だとわかった。

「半兵衛様…お目覚めですか?」

「あぁ、起きているよ、入りたまえ。」

襖に指がかかり、さらにするすると開いていく。
髪をきっちりと結った彼女が表れた。
僕を見て、目をまん丸にする。

「…半兵衛様!顔が真っ赤です!」

部屋に転がり込んで、彼女は僕の頬に触れた。
彼女の手がとても冷たく感じるのは、僕がそれだけ熱いからだろうか?

「あぁ、少し体調を崩したみたいだ。」

「いつも真っ白なお肌が、こんなに…。
きっと疲れが急に来たのです、秀吉様には私から伝えますから、しばらくここで休んでいてください!
すぐに冷やした手ぬぐいと、体に優しいものを作って持ってきます…!」

そう言って彼女は部屋を飛び出して行った。

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