第1章 意味、わかんないよ。
『ワンナイト…?』
男の人の声だ。なんか違和感があったけど、取り敢えず開けよう。
ドアを開ければゴツい鎧を着た人が立っていた。え、怖い。
『ルシウスちゃん…サーシャは…』
…は?なにいってんの、この人。言語が違うんだ。まぁ、辛うじてルシウスは聞き取れたけど…誰だサーシャって。
ぽかんとしていると男の人は部屋に目を向ける。
そして、お母さんに目が行った。
『サーシャ!』
…うん。どうやらサーシャさんって私のお母さんらしいずらね。
『サーシャ…酷い事を…アレックスめ、こんなことをしなくても…!』
なんて言ってるのかはわからないけど、悲しんでること位はわかる。
そして、男の人(といっても14、5歳の少年だけど。)は私の方を向いてポツリ呟いた。
『君は強い子だな…涙1つも見せない…』
優しく頭を撫でられた。精神的にそんな歳でもないけど、不快な訳じゃないよ。なにいってるかは相変わらずわからんけど。
『これから君はどうするの?』
「…何て言ってるのかはわかんないけど、お墓つくりたい。」
『…他の国の言葉かな?わかんないな…。』
首をかしげられたのでお母さんを引っ張り、腕を組ませた。そしたら少年もわかってくれた、らしい。
『お墓…かな?よし、だったら僕も手伝うよ。』
悲しそうに頷いてくれた。あぁ、少年よ。なんて優しいんだろうか。
夕暮れ、夜が近い庭先。ちょこんと立っている墓標には『サーシャ』と刻まれている、多分。
『…君はこれから独りだろう?』
「…何て?」
『あぁ、通じないんだっけ。ほら、独り。』
私を指差し、1、と人差し指を立てる。私が、独りだって事かな?私は頷いた。
『それで、僕ら聖騎士団はサーシャにかなり助けてもらっていたんだ。…君を一人置いていくのもアレだから…どう?僕と来ないかい?』
私を指差し、自分を指差して、さっきから目の端に入ってくるお城を指差した。…一緒においで、ってとっても良いのかな。
私の顔を見て、少年は明るく笑った。
『大丈夫。サーシャの娘って言えば皆わかってくれるから!ほら!』
差し出された手は何だか自信に満ち溢れていて、迷いも曇りもない。
いきなり血の海、私は5歳、なにがなんだかわからない私には、かなりの助けになった。