第1章 意味、わかんないよ。
「ルシウス…守って、あげられなく、てごめんなさい、ね…」
「ねぇ、もう喋んなくていいよ。」
「せめて…貴女の、恋人は見たか、ったわ…」
どんどん冷たくなっていく体。それは、お母さんであろう人の命が尽きていく事を意味していて。
「お、お母さんが…疲れちゃうよ…」
「ルシウスは優しい、のね…ワンナイト家に恥じな、い大人になるわね、きっと…」
私に体重がかかっていく。この体じゃ無理だ。膝を付いて踏ん張る。既に肩の骨はみしみしと悲鳴をあげている。
「お、母さん…(重い重い重いっ)」
「…後の、事は、頼んだわ…ね。」
そう言うと完全に事切れた母親の体は全体重が私にあずれけられる。
もう無理だ。私は後ろ向きに倒れた。
「ああもう、なんだって言うのさ…さっきから人間らしい反応1つも出来てないよ…」
何でこんなにも冷静なのか。それは今の現状をしっかりと把握できてないから。
「マジで此処どこなの…帰りたいんだけど…」
仰向けで一人呟いた言葉を拾ってくれる人なんているはずもなく。
かといってこのままじっとしていて解決することでもない。
「…自分で何とかしなくちゃいけないのかな…。」
私は何とか体の下から這い出ると立ち上がって辺りを見回した。
見れば部屋のあちこちに縦やら横に斬り後ができている。皿や食べ物は引っくり返されとても食べれるものじゃない。そして、血の海。
「え、何、結構凄い事になってるんですけど…怖っ!」
(推定)5歳の出来ることは限られているが、まぁなんとかなるんじゃない?元々深く考えるのは好きじゃないしー。
「まず、お部屋の片付けからかな。」
我ながら凄い順応能力だと思われり。
お母さんをうんうん言いながらやっとこさソファに寄り掛からせ(座らせるのは流石に無理だった)まず散らばった食器達を片付ける。そしたら落ちた食べ物を、最後に血をふきふき。
斬り後はどうにもならないから放置するしか無いけど、これでもかなり綺麗になったよね。
「あと…お母さん、どうしよう。」
一人で墓を造れと?無理があるわ。
どうしたもんか、とお母さんの顔を見つめる。え、結構可愛くね?
そんな事を考えていると、遠慮がちなノック音が聞こえる。