第3章 こんにちは、良い天気だね
「はい。」
「…はっ?」
きょとんとしている顔も可愛いよベイビー!
「ごめんね、今食べかけしかないから…今度は新しいの持ってくるよ。」
「え、いや、ちょ…」
わたわたしている姿を写真に修めたい衝動を殺しながらお使いを済ませて宿屋に帰る。わぁ、おかみさんが食事用意してくれてる!神様!
「おかえり。お使いしてくれたかい?」
「ちゃんと出来たよ~。」
お小遣いを貰って自分の部屋に入る。
(バン可愛かったなあ…明日もいるのかな。いたら林檎、持ってってあげよっと。)
次の日、食べていない林檎を2つばかり買って、あの場所に行く。あ、またいた。
「やぁ、こんにちは。」
「…。」
近くに林檎の芯が転がっている。
「あ、食べてくれたの?林檎。」
「…。」
「実はあれさ、毒入りなんだよ。」
「っ!?」
「嘘だよ。」
少し焦った顔はみるみる膨れっ面になった。反応が素直すぎて可愛いよマジで。
「あはは、ごめんね。よいしょ、っと…」
「…?」
私はバンの隣に座り込んで、1つ林檎を差し出した。
「…?」
「一緒に食べよう?」
固まっているバンを他所に私は林檎をかじる。うん、美味しい。
暫くすると隣からもシャクッと音がしたので盗み見るとバンがモグモグしていた。
にやけるのを堪えながら林檎を食べていると、バンが口を開いた。
「…なんで、」
「ん?」
「なんで、俺にくれたんだよ。」
コレ。と、食べかけの林檎を指差した。まぁ、出会っていきなり林檎くれるやつとか、不審者でしかないんだけど。
「…君がさ、あまりにも悲しそうにしてたからさ。」
「俺が…?」
「うん。」
少しの沈黙。そしてバンは顔をうつ向かせ、肩を震わせている。
(あれ…?私、なんかヤバいことしたかなぁ…?)
「…くくっ…っく…ぶっ!だぁっはっはっは!」
「えっ?」
「俺が、悲しそうに、見えた?くくっ、盗賊なんて言われてる、俺が?あっはっはっはっは!」
え、凄い笑ってるんですけど?私なんかつぼる事を言ったかな。
「はっは…お前、気に入ったわ♪俺はバン。お前、何て言うの。」
「え、ルシウス・ワンナイトだけど…」
「ワンナイトって言えば英雄サーシャの名前だぜ?お前、娘かなんか?」
「うん、娘。」
「マジか。…で、何でそんな奴が町にいるんだよ?」