第3章 こんにちは、良い天気だね
「はぁ、はぁ…。ちょっと、いやかなりきつい…!」
私は今、城からかなり離れた所まで来た。手には小刀を握っている。
城下町を出る前に、1回お母さんの家に言った。墓に行くと小刀と手紙。手紙には…
『これから困難に勇敢に立ち向かうであろう愛しき娘へ。』
と。愛しき娘が私である可能性はあまりないが、せっかくなので貰ってきた。
そして今。ズキズキ痛む頭を押さえながら少しずつ歩く。さっき血を吐いちゃったけど、生きている。
ふと前を見ると、町があった。
「や…やった…!」
「っぷは。生き返った…!」
「アンタ、ちっちゃいくせに苦労してるんだね…」
小さめの宿屋に入った私はまず、水を貰った。おかみさんは優しい人で、残りのシチューも分けてくれた。おかみさんありがとう。
「今日は1日休んだらどうだい?疲れてるんだろう?」
「いいえ、町の様子を知りたいし…午後から外を見に行きます。」
「そうかい…じゃあ、ちょっとお使いにいってもらっていいかい?勿論、お小遣いは弾むよ?」
あぁ、おかみさん。あんたどんだけ人が良いんですか…っ!
午前中はたっぷり寝かせて頂き、午後からのお買い物。私はおかみさんが行っていた注意を思い出す。
『急ぐ用事じゃないから早くとは言わないけどね、帰ってくるなら早めに帰った方が良いよ。最近は泥棒が出るらしくてね。世の中物騒だよ全く。』
「盗賊ねぇ。」
さっき買った林檎をかじりながら町を見て歩く。穏やかだけど活気がある。良い町だなぁ。
町の端まで来たとき、フッと視線を感じてそちらを見る。すると…
(あれ…バンじゃね?本物のバンじゃね?え、マジで?私とおんなじ位の年なのかな?ちっちゃいよ!)
何を隠そう、漫画で一番好きなキャラクターはバンなのさ。結構見てるからきっと、苦労した幼少期なんだなってことはすぐわかった。
もしかして、友好度上げとけば良いんじゃないか?
というか、こんな人を目の前にしてどっかに行くほど腐った人間じゃありません。
「こんにちは、良い天気だね。」
「…。」
バンはこっちを睨んだまま動かない。まぁ、初対面の奴にいきなり良い天気とか云われてもどう反応すればいいのかは私にもわからないよ。
かといってそのまま通りすぎるのも嫌だ。私の手元には食べかけの林檎。
…あ。