第1章 あなたという光
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いつも想いはすり抜けてばかり。
誰一人として、僕の想いを受け止めてはくれなかった。
熱にうなされようが、寂しくて泣こうが。
入れられた魔方陣の中、出ることも許されず注ぎ込まれた魔力。
僕はそんなものなど望んでいないのに。
辛いだけだった過去。
けれど、あなたが僕と同じ無属性として生まれたと知った時。
辛いだけだったそれが、意味を持った。
こんな僕でも、あなたを知らずに守れて居たのかも知れない…と。
例えば僕が生まれなかったら、あなたが狂信派の長老達に目を付けられて居たかも知れないのだから。
稀有な存在である無属性。
何も持たぬが故に、全てを持つ事が可能な存在。
全ての属性の刻印をその体に刻み、持て余す程の魔力を注ぎ込む事で作られた古代種の紛い物。
全属性の魔法使い。
それが僕、エスト・リナウドと言う少年だった。
僕と同じ無属性に生まれたあなた。
けれど、僕たちの辿って来た道は余りにも違っていた。
闇に身を潜めるように存在しなければいけない僕と、光の中で皆に光を与える存在のあなた。
だから憧れた。
けれど眩し過ぎたから。
僕には決して手が届かないと、ずっと諦めて居たのに。
あなたはいつでも勝手に踏み込んで来ては、僕を引っ張り出す。
光のある方へと。
どんなに拒んでも、僕に拒否権など与えないとでも言うように、それは酷く強引で。
けれど優しかった。
1人を好んで居ながらも、心のどこかにある寂しさをあなたが包み込んでくれたから。
「えっと…だから、これはね、エストが大好きだから…」
そして今日もあなたはと言えば、あいも変わらず破壊力のあるその言葉で、僕を翻弄する。