第1章 私の脳内回路はショート中
はて、ここはどこだろうと、ハルヒは、今さらながらにあたりを見回す。今まで前ばかり見ていたので気づかなかったが、後ろは、なんとも不気味なジャングルである。
ジャングルなんて初めてみた、と驚くが、こんな状況も初めてなので、やっぱり今さらである。
ハルヒには、おかしな薬物を飲んだ記憶は過去にも今現在にもなかった。そして、そんな予定もなかった。
とにかく自分は、幻覚を見ているわけではないらしいと、手の感覚を確認する。そして、ちょっと手の甲をつねってみる。手?
「!!!!??」
驚きのあまり、ハルヒは、自分の手を、腕を、凝視しながら、まるでそれらから離れたいかのように、後退りした。
ハルヒは、日本人である。黄色人種である。
今は、9月の初め。自転車通学なこともあるが、夏休み中、外を活発に動き回ったハルヒの体は、こんがり焼けていた、はずである。
だが、今のハルヒの体は、まるで陶器のような、透き通るような「白」だった。体中を見るが、色どころか、骨格も変わっているようである。
「嘘でしょ・・・・」
ハルヒは、もう泣きそうだった。さっきのような晴れやかな気持ちなど、もう微塵も心には残っていなかった。ぐちゃぐちゃの感情に押し潰れそうなくらい、心はパンク状態だった。
どんどん頭が垂れていく。ふと、目に入ったのは、小さなクマのぬいぐるみがついた、ハルヒの携帯だった。胸ポケットに入っていたそれは、ハルヒの今の唯一の持ち物だった。ハルヒは、慌てて取り出し、携帯を開けようとしたが、あまりのことに固まってしまった。
ハルヒの携帯の表面は、もともと鏡。
そこに映るのは、
燃えるような赤い髪。
宝石かと見間違ったほどの、エメラルドの瞳。
凛々しくも、整った、白い顔。
自分とは、思えなかった。