第1章 私の脳内回路はショート中
「まあ、そのことは後でいい。アンタのことは大体、把握している。アタシャ、見分色の覇気が得意なもんでね。」
ハルヒは、驚愕した。だから、ハルヒになにも聞かなかったのか。
「アンタが何者かは聞かないでおく。だが、これだけは聞かせな。アンタは、アタシャの敵か味方か。」
これもまた驚愕の内容である。自分の素性を聞かずにいてくれるのは、かなり助かるが、なんとも物騒な質問である。本屋に敵も味方もあるのだろうか。だが、おばあさんは、ハルヒにこんなに親切なのである。ハルヒの答えは、決まりきっていた。
「味方、だと思います。すいません、質問の意味が分かんないので、曖昧になっちゃて。」
「いいさ。その反応は、ある意味正しい。アンタ、行くところはあるのかい?」
ハルヒは、いいえと首を振った。
「なら、アタシャのところで働くといい。衣食住のことも安心しな。ちょっと狭いが、この上に屋根裏部屋がある。そこをアンタに貸してあげるよ。」
トントン拍子とは、このことである。さっきまでの地獄はなんだったのか。辛いことがあっても頑張れば、良いことがあるって本当だなとハルヒは思った。ありがたい話だが、お年寄り一人にこんなにお世話になってもいいのだろうか。店が繁盛しているようには思えない。その旨を失礼のないように尋ねてみると、なんとも意外な答えが返ってきた。
「フン、世話してやるってんだから、素直に甘えとけば、良いんだよ。しかも、この店に客が来るのは、大体、夜が多いんだ。仕事も山程ある。ちょうど猫の手も借りたいくらいだったのさ。安心しな。アンタには、覇気の素質が十分にある。すぐ慣れるさ。」
ハルヒは、これを聞いて、おばあさんがなぜハルヒを助けてくれたのか分かった気がした。いろんな意味で安堵した。おばあさんを疑っていた訳ではないが、おばあさんがゲロ野郎に自分を突き出そうとしたら、どうしようと思っていたのである。仕事のことは、ちょっと気になるが、まあなんとかなるだろう。