第1章 私の脳内回路はショート中
カランッという音を立てて、ハルヒには大きすぎる扉を開けると、ガランとした店の奥のカウンターに座っていた、おばあさんに鷲のような目で鋭く射抜かれた。
おばあさんは、ただ黙っていた。
ハルヒも黙っていた。
けれど、ハルヒは、思わず泣いてしまった。そして、心から微笑んだ。安心したのだ。やっと、やっと、まともな人に出会えた、そうハルヒの体中が叫んでいた。
ぐるるぅー・・きゅうくるるぅ~・・・
体は、本当に正直である。ハルヒは、頬を真っ赤に染めた。
おばあさんがハアッとため息をついた。
「腹が減ってんのかい。にしても、酷い恰好だ。客の邪魔になる。さっさとコッチに来な。」
ホラ、思ったとおり良い人だ。お客、いないじゃんと思いながらも、ハルヒは、素直におばあさんの好意に甘えた。
お風呂に、怪我の手当て、温かいご飯を、おばあさんは何も聞かずに与えてくれた。あまりのぬくもりに、ハルヒは、始終泣きっぱなしだった。おばあさんは、ただ飽きれたような顔をしながらも、やっぱり何も聞かなかった。
けれど、ハルヒが食べ終わった食器を片づけながら、おばあさんは、唐突に口を開いた。
「アンタ、覇気が使えるのかい?」
「え?覇気?」
ハルヒは、おばあさんの言葉にとても驚いた。覇気のことは、ワンピースの知識があるため、よく理解できるが、ハルヒは、そんなものを習得した覚えはさらさらなかった。そもそも、日本の現実世界で、そんなものを習得した人なんて聞いたことがない。いたら、超人かつ超有名人である。
「なんだい。無意識だったのかい?ここへ入ってきたときアンタは覇気を纏ってた。だから、てっきり、そう思ったが・・・・」
おばあさんは、ハルヒのきょとんとした顔に驚いたように言う。ハルヒもびっくりである。いつの間に、自分は超人になったのか。だが、よくよく考えてみれば、街からかなり離れた砂浜から人の気配を察知したり、ゲロ野郎を失神寸前の状態にしたり(すぐ起き上がってきたが)、大勢の追手からなんとか逃げ果せたのも(血と汗と涙と酒まみれになったが)、”覇気を使っていたから”と言われれば、妙に納得である。