第1章 私の脳内回路はショート中
ハルヒは、今、飲食店の裏口のゴミ捨て場に身を潜めている。しかし男たちの気配は、まだ、ハルヒの近くをウロウロしており、いつ見つかってもおかしくない状況だった。
ハルヒの体は、もういろんなものでドロドロである。白と青のきれいなセーラー服だったはずなのに、ところどころ破けており、酒の色にそまっていた。髪もネチョネチョして非常に気持ちが悪い。膝小僧は擦り剥け、腕や足も切り傷、擦り傷だらけで、体中、血まみれだった。
ハルヒは、痛みで泣きそうになるのを必死に堪えながら、息をひそめていた。
ガタッ!!
斜め右あたりから聞こえてきた物音にハルヒは、体をビクつかせた。
「ニャアー。」
猫だった。ハルヒは、ホッと胸をなでおろした。猫は、生ゴミや食べ残りを漁り、ゴミ箱の中身をあたりにぶちまけ始めた。近くにいるハルヒにも、ゴミがふってくる。
ハルヒは、心の中になんとも惨めな気持ちが広がっていくのを感じた。そして、今のハルヒの立場を唐突に理解した。
海賊の女、奴隷、娼婦、乞食
このどれかを選ぶ以外に自分の生きる術はないように思う。しかし、ハルヒは、どれも嫌だった。だから、逃げた。その結果、海賊に追いかけられ、道行く人に罵倒され、娼婦に敵意をむき出しにされ、そして今、猫にまでも馬鹿にされている。
死にたい。
ハルヒの心は、この言葉でいっぱいだった。ゲロ野郎たちに捕まるくらいなら、いっそ自分の手でこの命を絶とう、そうハルヒは、思った。どうせ、この体は、両親から貰ったものでも、なんでもないのだ。傷つけたって、構うものか。自分の体ではない、体なんていらない。そもそもこの体のせいで、今こんな目にあっているのだ。ハルヒは、急にこの体が憎らしく、そして汚物のように見えた。
すぐ近くに、ところどころ刃のかけた、少し錆びたナイフが落ちていた。
ハルヒは、それを手に持ち、自分の喉に思いっきり突き立てた。