第1章 私の脳内回路はショート中
ハルヒは、路地裏から路地裏へと、どんどん走っていくうちに裏町に入ってしまったようで、途方に暮れていた。
・・・・・ガラが悪すぎる。
ゲロ野郎たちも、ガラが悪かった。が、奴がハルヒに絡んできたのは、商船も多く出入りしている、割と整備された港だ。一般人も多かった。じろじろとは、見られたが、ここまで酷くはなかった。
裏町は薄暗く、じめじめとし、ハルヒの体中に、下卑た笑いを浮かべた男たちからの視線がまとわりつく。べとべとの液体を体中にぶっ掛けられても、ここまで動きづらく、そして不快な気分にはならないと思う。
とにもかくにも、日本育ちのハルヒには、この裏町を包む雰囲気とその様子が、刺激的すぎた。
とにかく臭いがひどい。思わず顔を顰めるほど泥臭い。タバコ臭い。
炉端には、酒とも泥水とも知れない液を浴びるように飲む男達が点在し、道中には、薬物中毒者なのか血走った目を宙にさまよわせながら、フラフラと歩いている女や殴り合いをしている男達、それを囃し立てる者がいる。
家々は、なぜ建っていられるのか分からない程、歪だ。
空には、そこら中に縄が張り巡らされ、布きれのような服たちが雑多に干されている。
ハルヒは、初めて目の当りにした光景に、ただただ茫然としながら、歩いていた。それが、いけなかった。
いきなり何者かに右腕を掴まれ、路地裏に引きずりこまれた。その瞬間、ハルヒは、眩暈がしそうになった。
鼻にパンチをくらったかのような強烈な香水の匂い。
むわっと顔中に纏わりつく、男と女が混じりあう臭い。
タバコのにおい。
ハルヒが、引きずり込まれた場所は、娼婦街の入口だった。