第1章 踏み出せない一歩
今日もそろそろ学校での1日が終わる。
伸びをするついでに、窓際斜め前に座る御幸に目を向け、その横顔に思わず見入ってしまった。
かっこいい、と伝わる事のない心の中でそう呟いてみて恥ずかしくなる。と同時に悲しい気持ちになった。
彼には友達が少ない。ましてや女友達なんて居ないに等しい。だって、彼はかっこいいから、女の子はみんな好きになってしまうのだ。
私は前に一度「お前だけだ、何でも言い合える女友達は」と言われたことがあった。
違うよ、本当は好きなんだ、なんて言えなかった。
言ったら最後、御幸はきっと私も他の女の子と一緒の目で見るだろう。あの冷え切った目で私を。そう思うと尻込みしてしまって、結局ズルズルとこの恋心を現在まで引きずってしまっている。
何度も諦めようって思った。けれど彼と話す度に、どれだけ私が御幸の事が好きか思い知らされて、結局諦めきれない。
私の意気地なし、グズ。なんて突っ込んでみても好きだって気持ちは勿論消えるはずもなくって、逆に増すばかり。
ふと御幸が此方を向く、目が合った。
ドキッと胸が高鳴り反射的に目を背けそうになる。
だめ、頑張れ、友達なんだから。
そう言い聞かせてぎこちなく笑えば、御幸は歯を見せて此方に笑いかけた。その表情にますます胸が高鳴って情けない、泣きそうだ。
好き、好きなの、御幸。
頭の中で何度も何度も繰り返し言って、感情が高まって、虚しい。
彼は高校のうちは、きっと彼女なんて作らないだろう。
でも大学は?プロになったら?
メディアで御幸と知らない女の人との交際報道がなされる想像をしてゾッとした。
その時の私は、どうなっているんだろう。
新しい恋見つけて、その日を懐かしく振り返られる様になってるのかな。
私は、そんな今考えても仕方のない事を考えながらぎゅっと拳を握って長いHRが終わるのを待った…。