第3章 出逢いと働き
梅「あとは口紅をぬって…」
「く、くすぐったいです」
梅「はん まだ喋ったらアカンよ」
梅さんに“お願い”を頼まれ
何をするのかと思えば
まさかの“お化粧”だったとは…
鏡の前に無理矢理 座らされて
引き出しがついてあり
その中にはお化粧品らしき物が沢山あった。
迷いもせず梅さんはテキパキと
手慣れたようすで
作業をしていく。
梅「よし 完成や 目ぇ開けてええどすえ」
化粧をする時から梅さんに「目を閉じろ」と言われ
今、ゆっくりと目を開ける
鏡に写る自分
下ろしていた胸あたりまでの髪の毛をアップにして
首筋が見え
紅い目立つ唇
「………」
今のメイクとは違い
少し驚きつつ
あまりメイクもしないため
似合っているのか似合っていないのか
正直…分からない
梅「驚いた?」
梅さんは鏡に写る私を見つめる
「あっ…は、はい…」
梅「とりあえず廊下で待ってる隼哉はん 呼びましょか…隼哉はーん もう入ってもええどすえ」
「え⁈ 化粧を落とさなくt…」
少し大きめな声で隼哉さんを呼ぶ梅さんは
なんだか楽しそうで
それに比べて
こんな姿を隼哉さんに見せるのかと
アタフタする私
ーッス
襖がゆっくりと開き
隼哉さんが入って来るのを感じた。
隼哉「えらい時間かかったどすなぁ」
隼哉さんの声にドキドキして
顔を見れず
鏡の方をずっと見ている。
顔が熱くなるのを感じ
心臓の鼓動が早くなる
こんなにも緊張するのかと思った。