第2章 影に隠れし人
隼哉さんの真似をするように
私も正座をして背筋を伸ばした。
隼哉さんはニコッと笑い
まさかの予想もしていなかった言葉に思わず…
隼哉「ほなまず名前やね」
「…へ?」
変な声が出た。
隼哉「まさか…名前ないんどすか?」
私の反応に隼哉さんは目を真ん丸にして驚く
「違います‼ 違います‼」
慌てて手を振り焦る私
「です‼ 花宮です」
隼哉「なんや名前あるんやないどすか…はんか…ええ名前どすな」
名前を言うと
何処かほっとしたように安心したように笑う
「いえ…」
隼哉「…わては志祇 隼哉(しき しゅんさい)どす 皆からは隼哉さん 隼哉はん呼ばれてるさかい好きに呼んでおくれやす」
「わかりました」
隼哉「ところではんは何処から来はったん?」
「え?何処から?えーと…東京…です」
隼哉「“とうきょう”…どすか?聞いたことあらへんなぁ 1人で来たんどすか?」
「1人…はい」
そう言えば私…家族の顔が思い出せない
自分の名前はわかるのに…家族の名前は…?
住んでいたのは東京
じゃあ…東京のどこ?
学校は?友達は?
思い出せない…私は何処に居たんだろう?
何で知らない町にいるのだろう?
隼哉「ーはん」
もしかして…これって…
「……………」
トリップってやつ?
いや、まさか…親や友達の顔も覚えてないし…
隼哉「ーはん?」
でも、服装が…車も自転車もない
飛行機もクーラーもなさそうだし
親や友達の顔を覚えてない
トリップしてその記憶がないのだとしたら
私は…
「…………」
これからどうしろと?
どうなっちゃうの?