第13章 信じて
穂波side
テツヤ君と初めて深いキスをした。触れるだけのキスなら何度かしたことがある。甘く、優しく、壊れ物を扱うみたいに大切に触れてくれるいつものキスとは違う荒々しいキス。だからこそ彼の気持ちがわかってしまった。彼は私のことを好きでいてくれる。でも信じていないのだ。私の気持ちも、自分自身のことも。
彼は自分のことを私を傷つけるだけの存在だと思っている。そして、私を傷つけることをとても恐れている。私達は始まりが始まりだから、彼がそう思ってしまうのも仕方ないのかもしれない。そんなことはないと、私はずっと伝えてきたはずだった。でも伝わっていなかったのだ。私はなんて無力なんだろう。
泣きながら部屋へ帰るとリコ先輩がいた。突然泣きながら入ってきた私に驚いている。
リコ「どうしたの穂波⁈何で泣いてるの⁈」
穂波「リコ先輩…私テツヤ君に大嫌いって言っちゃったんです。どうしよう…どうしたらいいですか」
リコ「落ち着きなさい。私が聞いてもいいことならいくらでも聞くからまずは落ち着いて」
先輩は私の涙が止まるまで待っていてくれた。