第13章 信じて
穂波「あのね…単刀直入に聞くけど、私何かした?テツヤ君がそんなに不安がるようなこと」
黒子「君は何もしていません。ただ僕が勝手にヤキモチを妬いているだけです」
穂波「嘘、あの時のテツヤ君震えてた。私がいるのを確かめるみたいに抱きしめてたし。それにテツヤ君はただ話してただけでヤキモチ妬くような人じゃない」
君はそう思ってくれるんですね。嬉しいです。でも本当の僕は…。
黒子「僕は結構嫉妬深いんです。君が他の男と楽しげに話しているのに耐えられなかった。だからみんなに君が僕のものだと示そうとしたんです」
穂波「…だったらやっぱり私のせいだね。テツヤ君、不安にさせちゃってごめんなさい」
違う、君のせいじゃない
穂波「私が好きなのはテツヤ君だけだよ」
それ以上言わないでください。僕が壊れてしまう。
君を壊してしまう
穂波「私はテツヤ君だけ…ん⁈」
君の言葉を遮るように唇を重ねました。一度もしたことの無い深いキス。戸惑う君の口内を貪るように犯していく。君が震えているのがわかりましたが構わず舌を絡ませ続ける。呼吸が限界まで達したところでようやく君を解放しました。
震えている君を強く抱きしめながら僕の口から出た声は驚くほど冷たいものでした。
黒子「…だったら証をください。君が僕のものであるという証を」
君の瞳に絶望の色が見えました。ああ、やっぱり僕は君を傷つけてしまうんですね。
穂波「…どうして?どうして信じてくれないの…?こんなに好きなのにどうして?」
黒子「穂波さん僕は…」
君が好きなんです、と言いかけたところでいきなり身体を押されました。君が離れていく。咄嗟に伸ばした手は宙をつかむだけでした。
穂波「信じてくれないテツヤ君なんて大嫌い‼︎」
泣きながら走り去る君の背中を、ただ呆然と見送ることしかできませんでした。
また泣かせてしまった。また傷つけてしまった。
やはり僕は君を傷つけるだけの存在でしかないのでしょうか。
波の音だけがやけに大きく聞こえました。