第13章 信じて
黒子side
夜の海はまるで僕の心のようです。暗く静かに、でも大きく波立っています。
穂波さんは僕の不安に気づいてくれたのでしょう。だから大丈夫だと言ってくれたんだと思います。僕を安心させるために。でも多分、僕が本当は何を不安に思っているのかまではわかっていないと思います。僕はまた君を傷つけるかもしれない。それが不安でたまらないんです。
緑間君が君に恋したことに気づいた時、僕の心を占めていたのは君への独占欲だけでした。君は僕だけのものだから誰にも渡さない。だからあんな強引な真似をしてしまいました。君が僕のものだと皆に知らせるために。
君を困らせるだけだとわかっていました。けれど僕はそうせずにはいられませんでした。君が離れていってしまうような気がしたんです。それは僕にとっては何よりも恐怖でした。君の存在が日増しに大きくなっていたからです。
君への想いと同時に独占欲も強くなっていきました。君には僕だけのために笑っていてほしい。抱いてしまえば僕だけのものになるかもしれないと思ったこともあります。ですがそれは僕自身が許せませんでした。僕が求めれば君は応えようとしてくれるでしょう。でも無理に君を求めてしまえば君を傷つけてしまいます。僕は君を傷つけるものが許せないんです。たとえそれが僕自身であっても。僕自身であればなおさら許せません。もう二度と君を傷つけないと誓ったのだから。
僕の独占欲が君を傷つけるかもしれない。それが僕は怖くて、不安で仕方ないんです。