第9章 咲き初める雨
黒子side
泣いてしまった君が落ち着くまで、そっと抱きしめたまま頭を撫でていました。君は温かくて柔らかくていい匂いがして、とても愛しい。君が壊れてしまわないようにほんの少しだけ腕に力をこめました。
黒子「もう二度と君を傷つけたりしません。泣かせたりしません。約束します。だからずっと僕のそばにいてくれませんか?」
耳元でそっと囁くと、君は返事の代わりに僕をギュッと抱きしめてくれました。愛しさが溢れてくる。このまま時間が止まればいいのにと思ったところで重要なことを思い出しました。
主将がくれた時間は10分。でも確実に10分以上経っています。ということはもしかしたら…。
周りから顔が見えないように君を僕の胸に押しつけると、君は少し戸惑った声で僕を呼びました。
穂波「黒子君…?」
腕に力をこめて動けないようにして、周りの様子を伺いました。すると渡り廊下の奥の方で鈍い音がしました。
穂波「?、今変な音しなかった?」
黒子「気のせいです」
カントク、ありがとうございます。このご恩は一生忘れません。
穂波「あ!黒子君練習の途中だったんじゃ…」
黒子「大丈夫です。今日は多分もう練習はありませんから」
不思議そうな顔をしながら僕を見る君をもう一度抱きしめて言いました。
黒子「大切にします。これからずっと」
穂波「…うん。私も大切にします」
ありがとう、僕の愛しい人。