第9章 咲き初める雨
穂波side
気がついた時には家にいた。どうやって帰ってきたのか記憶に無いが、リビングのソファに座っていた。まだフワフワしていて現実味が無い。一度振られた相手から告白されるというまさかの逆転ホームラン的展開に頭がついていかないのだ。とりあえず落ち着こうか、私。
ミルクティーを淹れて一口飲む。少しだが落ち着いてきた。彼が抱きしめてくれた肩にそっと触れると、まだ彼のぬくもりが残っているような気がした。
「大切にします。これからずっと」
彼の言葉を思い出して、なんだかプロポーズみたいだと思った。そういえば結構恥ずかしいセリフを山ほど言われた気がする。そういうセリフをサラッと言えるあたりすごいな彼は。これは覚悟して付き合わないと心臓持たないかも。
♪ピロリん♪
律香からメールがきた。次の休日に遊びに行こうと誘われた。そうだ、律香には報告しとかなきゃ。…あ、でもなんて言えばいいんだろう?
色々考えたけど結局、「彼氏ができました」とだけ返信した。すぐさま律香から電話がかかってきた。
律香「もしもし、穂波どーゆーこと⁈」
穂波「あの、律香、だからそのままの意味で…」
律香「そのままって…相手誰よ⁈」
穂波「えーと、その、黒子君」
律香「は?」
穂波「だから黒子君。今日告白されてOKしたの」
律香「ちょっと待ってそれどーゆーことよ⁈」
早口でまくし立てる律香に落ち着いてと言いながら、今日あったことを説明する。
律香「じゃあ何?黒子君も本当は穂波のこと好きだったってこと⁈」
穂波「うん…まあそうなるかな」
律香「何よそれ鈍いにも程度ってものがあるでしょ?告白された時に気づかない普通?」
穂波「そこは結果オーライで」
律香「結果オーライじゃないよ穂波がどれだけ辛い思いしたと思ってるの‼︎」
穂波「今は幸せだからいいの」
律香「あんた人がよすぎ」
穂波「ありがとう、律香」
律香「今お礼言うところじゃないでしょ」
なんだかんだ言いながら、律香はおめでとうと言ってくれた。本当にありがとう、律香。