第2章 始まりの花
4月は憂鬱だ。新しいクラス。
私は人の名前を覚えるのが苦手だ。クラスメイト全員の名前を覚える頃には学年が変わっているであろう自信がある。せめて周りの席の人達だけでも早く覚えなきゃ。
入学して2日目、まだぎこちなさの残る教室へ入ると隣の席の男子と目があった。とりあえず挨拶しといた方がいいのかなこの場合。
穂波「あ、えーと…おはよう」
黒子「おはようございます」
彼は少し驚いた顔で挨拶を返してきた。
黒子「あの、君は僕が見えるんですか?」
え、何言ってんのこの人?
穂波「えーと…うん、見えるけど。もしかして見えちゃいけない系の人だった?」
黒子「いえ、僕は普通の人間です」
だよねえ。
穂波「だったら普通に見えるでしょ」
黒子「いえ、僕は他の人より存在感が薄いので気がついてもらえないことの方が多いんです」
穂波「…大変だね」
そんなことってあるんだろうか。目線を逸らそうとして彼の髪に何かついていることに気づく。
桜の花びら?
穂波「あの、髪に何かついてるよ?」
黒子「教えてくれてありがとうございます」
あれ⁈この人もしかして…。
穂波「もしかして昨日もつけてなかった?桜の花」
黒子「どうしてそれを知っているんですか?」
あ、やっぱり昨日の人だった。同級生⁈てか、隣の席って何この少女漫画展開は⁈