第2章 始まりの花
穂波side
始まりは4月、入学式の日に遡る。
穂波「…なんだろうこの光景は」
見渡す限り人、人、人。部活動の勧誘をする上級生と熱烈な勧誘に翻弄される新入生。ある意味地獄絵図だ。
穂波「高校ってこういうもんなの?」
誠凛は創設2年目の新設校だから、上級生は2年生だけ。どこの部も部員が足りないのだろう。とはいえ、割と呑気でのどかな中学生活を送ってきたのでこの漫画のような光景に若干というかかなり戸惑う。
あまり長く立ち止まっていては通行の邪魔になるし、私こと小坂穂波は意を決して一歩踏み出した。
人混みの中を歩くのは得意だ。襲いかかる勧誘の隙間を縫って前に進む。捕まらない自信はあった。それでも5枚ほどのビラを押し付けられた。部活に入るつもりの無い私にはゴミ同然だ。
穂波「なんかもったいないなぁ、紙が」
でもわざわざメモ用紙にするのも面倒だし…と考えていると、後ろから誰かに抜かされた。本を読みながら人混みの中をすり抜けていく少年。彼も人混みの中を歩くのは得意なのだろう。誰にも声を掛けられることなく歩いていく。
…誰にも声を掛けられずに?
上級生を意識して避けて歩いていた私ですら5枚ほどのビラを持っているのに、彼は本を読みながら歩いているにもかかわらず誰にも声を掛けられない。
穂波「もしかして上級生かな?」
もう既にどこかの部へ所属している上級生なら、誰も声を掛けないだろう。遠ざかる後姿をなんとなく見送りながら、私はあることに気がついた。
頭の上に薄いピンクの何かが乗っている…気がする。何故か確かめなければいけない気がして追いかけようとした。そこへ横から声を掛けられる。
「君も神へと続く一手を極めてみないか?」
…なんですかそれは。
一緒に押し付けられたビラを見ると、「ハッピー人生ゲーム部」とあった。
そんな部まであるんですかこの学校は。