第7章 散華
穂波side
朝、思いきりよくむくんだ顔と腫れた瞼を鏡で見て苦笑する。こんな「振られました」って顔で学校行けないよ。でも休む訳にはいかない。休めば律香が心配する。彼を責めるかもしれない。それだけは絶対にダメだ。気休め程度だけど、冷たい水で顔を洗って登校の準備をした。
教室へ入ると律香がいた。やっぱり心配そうな顔をしていた。
律香「穂波!」
穂波「おはよう律香」
律香「穂波…」
穂波「ありがとう律香。でももう大丈夫だから」
律香はうん、とだけ言って何も聞かずにいてくれた。私はできるだけいつも通りに笑って言った。
穂波「それより律香、英語の予習やってきた?私今日当たるのに何もやってないからノート見せて?」
律香「げ、英語って一限目じゃん!先生来る前に早く写して!」
いつも通りでいるよね、私。
お昼休み、律香を屋上へ誘ってお弁当を食べた。昨日のことを話しておいた方がいいと思ったから。
穂波「律香、昨日のことなんだけど聞いてくれる?」
律香「いいの?穂波」
穂波「うん…聞いてほしいの」
屋上へ続く階段で、彼に返事は今でなくていいから付き合ってほしいと言ったこと。彼には「バスケが一番大切だから一番大切には思えない」と振られたこと。順を追って私は話した。
律香「何それバスケが一番大切だから付き合えないって!」
穂波「落ち着いて律香、私はそれでも嬉しかったんだよ?黒子君はなるべく私を傷つけないようにするためにそう言ってくれたんだから」
穂波「迷惑だからって突き放してもおかしくないのに、ちゃんと私の気持ちを受け止めてくれた上で応えられないって言ってくれたんだよ」
律香「そんなのわからないじゃん‼︎」
穂波「わかるよ。その時の黒子君、すごく辛そうにしてたから。だから律香、黒子君のことを悪く思わないで」
律香「穂波はそれでいいの?」
穂波「うん…今はまだ黒子君の顔も見れなくて避けてるけど、いつか前みたいな友達に戻れたらいいと思ってる」
律香「穂波…あんたバカだよ」
穂波「うん、自分でもそう思う」
律香はそれ以上何も言わなかった。