第7章 散華
黒子side
小坂さんが僕に告白してくれた日から一週間が経ちました。始めのうちは完全に避けられていたけれど、今は挨拶程度ならしてくれるようになりました。でもまだ目を合わせてはくれません。表情からは笑顔が失われたままです。
あの日君は最後まで僕に謝っていました。「迷惑をかけてごめんなさい」と。本当なら僕が謝らなければいけないのに、僕のことを気遣ってくれました。別れ際に「今日のことは忘れて」と小さな声で言っていたけれど、僕は忘れられません。震えていた声、泣くのをギリギリで堪えていた顔、それでも一生懸命笑おうとしていた君を。僕がどれほど深く君を傷つけたのかを思い知らされました。
笑わなくなってしまった君を見ていると、胸の奥の一番柔らかい部分を握り潰されたみたいに苦しくて仕方ありません。多分これが罪悪感なのでしょう。
それにしても、どうして僕はあんなことを言ってしまったのでしょうか。君からの告白を受けた時、僕は頭の中が真っ白になって何も考えられませんでした。そこから自然と出てきた言葉なのだから、あれは僕の本心なのでしょう。けれど心の何処かでそれは違うと叫ぶ声がしていました。どちらが僕の本当の気持ちなのか、僕にはわかりません。ただ一つわかっていることは、君はもう僕に笑いかけることは無いということ。あの、花が咲いたみたいな優しい笑顔を僕に向けてくれることはない。これは君を傷つけた僕に与えられた罰だ。それでも願わずにはいられない自分がいます。君がもう一度、あの優しい笑顔で笑ってくれることを。
例えそれが僕に向けられたものではなかったとしても。