第3章 えんそくえんそく
遠足当日、かなり早起きして4人分のお弁当を作った。よし、準備万端!
穂波「行ってきます!」
私は誰もいない部屋にそう言って鍵をかけてエレベーターへと向かった。
私は今、一人暮らしをしている。仕事でイギリスへ行っている兄夫婦のマンションに住まわせてもらっているのだ。別にイイトコのお嬢様という訳では無い。ただ、家から誠凛まで少しばかり遠いのだ。実家は埼玉との県境にある。毎日電車を乗り継ぎ通うのも嫌だった。そんな時に兄が仕事でイギリスへ行くと聞いて、神様はいると思った。兄夫婦のマンションは誠凛の近くにある。私は両親と兄夫婦を説得した。留守中、兄夫婦のマンションに住まわせてほしいと。両親はもちろん反対したが、兄夫婦は意外にも承諾してくれた。大学へ進学すれば一人暮らしを始めるのだからと一緒に両親を説得してくれた。誠凛まで電車で二駅という立地条件と兄夫婦の説得のおかげで渋々ながらも両親は一人暮らしを認めてくれた。そして私は高校入学と同時に一人暮らしを始めた。思っていた以上に大変だったが楽しかった。