第2章 テニスの王子様/氷帝/
「なぁ侑士、もうひっくり返していいんじゃねぇの?」
「甘いで岳人……まだ早いわ」
だがしかし、それでも跡部の存在に気付かないメンバー達。
美味しそうな匂いと音で、自分達の腹の虫を鳴かせながら鉄板を見つめている。
慈郎なんて口からヨダレを垂らしていた。
「芥川さん、口拭いて下さいよ」
「ああごめん!」
それに気付いた日吉は嫌そうな目付きで指摘。
「こういう時は寝ないんだな」と心でボヤきながら。
慈郎は楽しい事が大好きなので、テニスで強い相手と当たる時は勿論、お祭りなどでも張り切って起きている。
が……
「早く早くー!俺腹減ったCー!」
騒がしい。
キラキラと輝かせている瞳はまるで子供のようだ。
折角拭いたヨダレがまた筋を描いて落ちていくのを見て、日吉は「ハァ……」と溜め息をつく。
もう注意しないところからして、諦めたらしい。
「よっしゃ、そろそろええやろ」
「失敗すんなよ侑士!」
「アホ、岳人やないんやから」
「なんだよそれ!」
そんなこんなでたこ焼きも大詰め。
ピックを握り直し、具材が幾つも並んでいる鉄板を見つめる侑士に一同ゴクリ。
跡部もゴクリ……はしなかったものの見守っている。
キラッと伊達眼鏡を光らせ、侑士独特のひっくーい声で「いくで」と言った瞬間……次々と具材は返され、丸い頭へと変身していった。
『凄いです忍足先輩!メガネに油飛んでますけど!』
「あかんちゃん…!何言うとんねん、手元が狂う」
『すみません!でも見えづらくありません?』
「せやなぁ……」
鉄板から目を離さずに答える侑士は一言「油」と言う。
彼は手術の「汗」を「油」に変えてボケてみただけ。
『はいっ!』
何故か理解出来たはティッシュでササッと眼鏡を拭いてあげる。
「どや、ちゃんが俺の眼鏡を拭いてくれたで」とでも言いたいのか、侑士は満足気にニヤついてしまうのだが……
何せ相手は油だ。ササッとでは完全に落ちるわけがない。
「ボヤけて前が見えへん…!」