第1章 勿論、返事はYes [菅原孝支]
「…何間抜けな顔してるの?」
生きてるかー?と言いながら排田は俺を揺さぶる。
「い、生きてる生きてる」
急いでそう答えたが、少し声が上擦ってしまったような気がした。その恥ずかしさに少し頬が熱くなる。その所為ではないかもしれないが。
「どした?」
俺がそう問えば、排田は少し思案顔をした。
悩み事でもあるのかと、目線を合わせれば彼女は俺から目を背け頬を染め、後ずさる。
俺は彼女の挙動に目を開いた。
なんだ、これ?
俺と話す時、こんな反応してたっけ?
思わず頭に手を乗せ、ぽんぽんと撫でてやれば、排田はいっそう顔を赤くする。
何処と無くいつもの雰囲気とは違う気がした。
胸がとくり、と切なく鳴る。
可愛い、好きだなあ、と言ってはいけない言葉を頭の中で繰り返しながら見つめていれば彼女は此方を見上げ、
「今日、一緒に帰ろ」
そう言った。