第3章 藍染惣右介
「ただいま…⁈」
藍染が部屋に入ってきた瞬間、目を見張った。
その目線の先には本が山積みになっていたからだ。
その本は、藍染本人が幼少期に読んでいたものであった。
そんな本の中にいた主人公の名前は、
藍染を見ると申し訳なさそうな表情になった。
「これ…」
「ごっ、ごめんなさい…勝手に」
「いや、これ…全部読んだのかい?」
「…はい」
驚いて目を見開く藍染と裏腹に主人公の名前はシュンとしていた。
「謝ることないさ。凄いな、こんな量を短時間で…」
「惣右介様…」
「…え?」
様付けで驚いた藍染は、また目を見開く。
子供目線で、名前呼びが普通だと思っていた主人公の名前は、「惣右介様」と呼ぶことを選んだ。
主人公の名前は恥ずかしそうに、
少しの笑みを浮かべてはにかんだ。
「嬉しいな…ここに来て、初めて笑ってくれた」
それを聞いて、また恥ずかしそうに笑う主人公の名前に、藍染もまた微笑む。
「でもなんで様付けなんだい?」
「この本に書いてあったの。目上の人、敬意を示す呼び方だって」
「…そうか」
成る程、と合点がいった藍染は微笑み、
また主人公の名前の頭を優しく撫でた。
家族を無くしたショックが、少しだけ…ほんの少しだけ、和らいだ。