第3章 藍染惣右介
「…君の家族の代わりにしろ、とは言わない。
が、君さえ良ければここに住むといい」
優しい笑顔で告げられたことは、
また涙を溢れさせるには十分なものだった。
「わっ⁈す、すまない。泣かせるつもりじゃあ…」
「あ、り…っがとぉ…」
見ず知らずの人だったけど、
その優しさに嘘はないと、幼心に思った。
・
・
・
「うん、よく似合ってるよ」
「…」
お昼頃、
藍染惣右介さんという死神は、綺麗な着物を持ってまたアタシの前に現れた。
「こんな高そうなもの…」
「子供はそんなこと気にしなくていい、家族同然に考えてくれていいんだよ」
「あ…ありがとうございます」
翡翠色を基調としたそれは、
所々に蝶が金糸で縫いこまれていて
光に当たるとキラキラと輝いた。
「あぁ…ごめん、そろそろ戻らないと。この部屋で待っていてくれるかい?」
「…」
黙って頷くと、藍染惣右介さんは頭を撫でて部屋を出て行った。
嫌悪感どころかその暖かい手を、アタシは心地良いと安心した。
「…」
部屋で待てと言われたが、暇である。
子供に待て、というのは効かない。
が、拾ってもらった身故、言いつけは守らなければいけない。
「部屋から出なきゃいいんだよね」
子供特有の言い訳で、
部屋の中を散策することにした。
幸いにも押し入れがあり、子供の興味をそそるには十分なものだった。
「うわぁ…」
押し入れの戸を開けると、そこには本、本、本の山。
手に取った本をパラパラと捲ると
子供用の本なのか、字が大きくて読みやすかった。
「…」
いつの間にか、無心で本を読み漁っていた。