第9章 就任
「市丸ギン、君に五番隊第三席の席を与えよう」
「ほんま?」
「あぁ」
無邪気なギンの笑顔に、私は面食らった。
先ほど人を殺めたばかりというのに、この身代わりよう。
私には無い強さがかいま見えた。
それほど冷徹であれば、惣右介様も喜ぶだろうか。
しかしその無邪気さが、私には不可解にしか思えなかった。
「ボク、藍染副隊長に協力したろか?」
「…なに?」
軽率な発言に、藍染から滲み出るような重い霊圧が襲いかかった。
主人公の名前の眉間にもシワが寄る。
「そんな怖い顔せんといて下さい」
「…何故、私に協力などと?」
「なんとなくやけど…ほらボク、人間観察趣味やねん」
戯けたようにはしゃぐギンに、私は空いた口が塞がらなかった。
こいつは、ここまで見抜ける力でもあったのだろうか。
否、コイツは一体何を考えてるんだろうか。
「ふ…面白い、ギン。君には期待できそうだ…」
「おーきに」
こんなにも簡単に、ギンを仲間につけていいのだろうか…?
主人公の名前は不思議に思い、藍染を見つめる。
それに気が付いてか藍染は目を細めてギンに言い放った。
「私に逆らいたいなら逆らうがいい。その時は私が、君の四肢を八つ裂きにしてみせよう」
「ひゃあ怖い怖い…こりゃもうボク逆らえんなぁ」
黒々しい空気が漂い、私は面食らっていた。
足元にある死体は、既に霊子として消え去った。
やはり、ギンという少年の本心は計り知れない。