第9章 就任
「…?」
ギンのそばに、もう一人居るのに気が付いた。
怪しく笑い、ギンに何かを言っているようだった。
…ここからじゃ、よく聞こえない。
もう少し…もう少し近くに…。
誰?何を言っているの?
近付こうと右足を出す…
その足が茂みに引っかかり、微かながら葉の揺れる音がしてしまった。
「…誰だ?」
「!!」
…その、声。
間違えるわけない。
私の…大切な_____
「…惣右介様。いえ、ここでは五番隊副隊長様、でしょうか」
黒縁眼鏡が月明かりに光り、その全貌が露わになった。
それは副官章を腕につけた、企てを聞いて以来の藍染惣右介だった。
「主人公の名前…?久しぶりだね」
「お変わりなくて安心しました」
「五番隊副隊長様か…随分と他人行儀だ」
惣右介様…いや、五番隊副隊長は浅くため息と共に口角がゆっくりと上がった。
月明かりに照らされる彼の笑みは、更に妖艶さが増していた。
「その方が今後の為に有意義では?」
「ふ…わかってるじゃないか」
「なんや二人で話し進めんといてくれますー?」
困惑した顔で割って入ったギンの言うことも一理ある。
私はそのまま黙って五番隊副隊長の言葉を待った。