第9章 就任
盗み見が、悪い事などよーく知っている。
現世であれば犯罪にもなり得る行いだ。
…しかし、それでもどうしようもなく気になる事が、身の回りには起こるのである。
「…五番隊隊舎ってこっちだっけ」
闇に紛れてコソコソと移動する主人公の名前は、数年前に訪れた隊舎へ向かっていた。
記憶は曖昧なため、危ういが。
記憶をたどり、何とか五番隊舎にたどり着いた。
「…!」
遠方から、微かだか金属音が聞こえた。
あの音は、刀がぶつかり合う音…。
まさか、ギン…?
音のした方に向かい、植え込みの茂みに体をうずめた。
目を細めて、前方100m程先の人物を見つめた。
銀髪に、小さな身体。
そして、短い斬魂刀。
間違いなく...ギンだった。
ギンは相手の斬撃を軽々と避けるだけで反撃しようとはしてなかった。
ただ、いつものニタリとした笑みはより強みを増していた。
そしてその瞬間は一瞬にして訪れる。
「射殺せ…神鎗」
構えた刀身が伸び、そのままそれは相手の身体を貫いた。
場所からして、心臓を貫いているであろう…もう、あの死神は助からないだろう。
「…」
ギンが死神を殺めた。
目の前で起きてる現実に戸惑いながら、ただジッとその張り付いた空気の血生臭い光景を見ていた。