第9章 就任
「開け、蕣花」
解合と共に形状を変化させる刀に、彼は目を丸くし口を魚のように開けた。
「うそぉ…」
絶句するギンをよそに、一瞬にして距離を詰め寄り、ギンの喉元に薙刀の刃を突き付けた。
「わ、わかったわかった。ボクの負けや!せやから刀締まってぇや‼︎」
「自分だけが始解できると思ったギンの傲りね」
ニッと笑い始解を解いて刀を鞘に収めた。
ギンも始解を解いて鞘に収めた。
「聞いてへんよ、始解出来るなんて...出来へんかと思っとったわ」
「言ってないもの」
ふ、と口角を上げて微笑む主人公の名前を、ギンは後頭部をかきながらそれを見つめていた。
「何見てるのよ」
「え...あぁいや、何でもあらへん」
その視線に気がついた主人公の名前はギンに問いかける。
あからさまに何かありそうな態度であったが、追求するのも面倒くさい。
そう、と短く返事をして主人公の名前は刀を撫でた。
「はーぁあ…また勝てへんかった。やんなるわぁ」
「勝てると思う方がおかしい」
「言うやないの。見ててみぃ、絶対主人公の名前より強ぉなって...」
「おぉぉぉおい‼︎お前らぁぁぁぁあ‼︎‼︎」
ギンがこちらに向かって指差し宣言している途中、
どこか遠くから誰かの雄叫びが聞こえてきた。
その声は洞窟の外から聞こえてきていて、二人揃って洞窟から顔を出す。
目を凝らすとその人物はこちらに走ってきていて、なにやら怖い形相だった。
「「…?」」