第8章 ギンへの信頼【過去編】
「藍染さん!あそこにもいるわ!」
「……」
嗚呼、うるさい。
うるさい、うるさい。
「流石藍染さん!一撃で倒すなんて凄いわぁ…‼︎」
「…」
演習が始まってからコイツはただ私の後ろ付きまとい、キャーキャー猿みたいに軽いお世辞をツラツラと話していた。
いい加減離れよう、そう思った瞬間、頭に鋭痛が走った。
...多分、斬られた。
クソ...近づいてることに気が付かなかった。
「ちっ…浅いかぁ」
「…アンタ、何してんの」
「あ、やっと話してくれた」
「...聞いているのですけど」
「えー…普通にムカつくし、アンタ」
嗚呼、くだらない。
くだらない、くだらない。
これだから人は嫌なんだ。
だから関わりたくないんだ。
嫉妬にまみれた女が手にしていたのは、刃が丸出しになった斬魂刀。
先には私のものであろう血が付いていた。
左目に何か、液体が伝わった。
それがそのまま頰に伝わり、ペロリと舐めとった。
口一杯に広がったのは、鉄の味。
ドクンと、大きく心臓が跳ねた。
「…」
無言で斬魂刀を鞘から抜き、女に向かって構えた。
それを見た女は高らかに笑い出す。
「あっはっはっ…藍染さんさぁ、自分が一番強いとか思ってるんだろうけど、勘違いしないでよー?」
「…」
「本当もう…そういう態度さぁ」
強い風が吹き、切った額の傷口に乾いた空気が当たった。
「ムカつくんだよ」
ドスの効いた低い声で、刀を振りかざしきた女を、蔑んだ目でジッと見ていた。