第7章 市丸ギンと私
「…もうだいぶ昔の記憶だから曖昧なんだけど。私、流魂街出身なんだよ」
悲しいような、それでいて開き直っているような表情で、主人公の名前は淡々と話した。
「ホンマか?…いや、主人公の名前は嘘付くよーな子じゃあらへんな」
「…話、長くなるけどいいかな?」
「ええよ。あ、そこの木の下行こか」
ギンが誘導した木の下に座り、青々と生い茂る葉を見上げる。
その奥には、真っ青な空が広がっていた。
一呼吸置いてから、私は話した。
市丸ギンを、私は信用して…。
家族は死に、途方に暮れていた私を惣右介様が拾ってくれたこと。
今の私の知識や技術は、全て彼の教えてくれたものであること。
私には、彼が全てだということ。
彼の命令ならば、私は命さえも惜しまないということ。
主人公の名前はギンと目線を合わさずにずっと空を見て話していた。
ギンは、静かに主人公の名前を見つめて話を聞いていた。
ギンの中では様々な感情が混ざり合い、ぶつかり、頭がパンクしてしまうのではないかというほどになっていた。
幼い頃、同棲していた金髪の彼女と…
目の前にいる、倒す相手べき者を慕っている主人公の名前
市丸ギン自分自身が、目的を果たしたとして、目の前にいるこの少女は、果たしてどうなってしまうのだろうか。
彼の中で、凄まじい葛藤が起こっていたことを主人公の名前はまだ知らない。