第7章 市丸ギンと私
「くっ…」
「アカンなぁ、その右ばっかに斬撃するクセ、まだ残ってるやん」
私の斬撃を受けながらも、
飄々とそれを躱して受け流すギンの忠告に、余計なお世話だと悪態をついた。
簡単に受け流しているようだけど反撃する間を与えず、ギンは冷や汗をかいていた。
「人のクセ忠告するぐらいだったら…反撃でもすれば?アホギン」
「アホは余計や」
ギンは斬撃を受け流すのではなく、主人公の名前の右の懐に潜り込むように避け、下から木刀で突いてきた。
「ちっ…」
緊急回避したものの、顎が掠れて地味に痛んだ。
「そこまで!時間切れだ」
「えぇ〜、ええやんあともうちょっと」
「とかいって市丸、お前もうかれこれ20分過ぎてるんだぞ。終わり」
先生によって半強制的に終了された剣術演習は、
周りで見守っていたクラスメイトの拍手に包まれて終わった。
「はーぁあ、明日からお盆休みか。ボク帰るとこないからずっと寮いるんやで?暇過ぎて涙でるわぁ」
「泣いてれば?」
「酷いなぁ…主人公の名前はどないするん?」
教室に帰る廊下で、二人並び歩きながら明日からのお盆休みはどうするか話した。
そういえばギンは、流魂街出身か…
元を辿れば私もだけど。
「私は…帰るよ」
「…藍染家か」
「えぇ…大切な人に会いに」
そう、
私を育ててくれた…藍染惣右介様に。
「えぇなー、貴族出身は」
「…違うよ」
「…え?」
あっけらかんに笑っていたギンは、
私の言葉でその笑顔は消えた。
自分の耳を疑っているようだった。
「…他人には、言ったことないんだけどさ」
3ヶ月の時に、私の心はギンに対してすっかり溶けきっていた。
私の信頼する、数少ない一人となっていたのだ。
「私、拾われたの」
「拾われた⁈」
「バカ、声大きい」
後ろから的確なローキックをギンの背中に蹴り入れた。
鈍痛に顔を歪めたギンは、両手を合わせてごめんと意味を表した。