第4章 死神に
一人になった屋敷の縁側に、いつものように腰掛けていた。
しかし、物思いに耽るわけではなく、本を丁寧にめくった。
「鬼道…」
ふと、ある詠唱が目についた。
とくに意味はない。が、独り言として呟いた。
「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ …鬼道の七十三、双蓮蒼火墜」
鬼道を出す真似で、手のひらを前に翳した…のが、間違いだった。
静かな瀞霊廷に、爆音が響き渡った。
砂煙の中、見えて来たのは厚い壁に空いた、大きな穴。
そこから何事かと覗き込み、刀を構える大勢の死神。
嫌な冷や汗が、頬を伝った。