【黒子のバスケ】人を外見で決めては絶対いけません!
第13章 眼鏡と鷹
声を出す間も与えず、黒子君は私を引き寄せた。
私よりも広い胸が近くにある。
私を包み込む、腕、硬くゴツゴツした指。
耳にかかる吐息。
遅れて抱きしめられている、と気付く。
じわじわと顔が火照ってきて、身体がまるで金縛りにもあったかのように硬直する。
バクバクと心臓が煩い。
どうして、黒子君は私を抱きしめているの。
「っ……すみません。」
黒子君はハッとし、私を拘束していた腕を解いた。
彼は私と一定の距離をとると、私と反対の方向を向く。
「………。」
「………。」
花畑に似つかわしくない沈黙が私達を包んだ。
彼は今どんな表情をしているのだろうか。
気になるのに、顔を上げられない。
あの時みたいに怖いとかいう負の気持ちは湧いてこなかった。もしかして黒子君は私が好きなのか、という問いを自分にしてみて、いやいや、と首を振る。
そんなわけはない。だって、今まで黒子君は私をからかって遊んできた。
でも、何だか最近の黒子君はすごく優しくて。勿論毒を吐いてくることもあるけど、そんな時の彼の表情はとびっきり優しい。
調子が狂う。
あんなに苦手だったのに。
「えっと……この花、綺麗だね!」
私は高鳴る鼓動を誤魔化すように、適当に目に入った白色の花を指差した。
適当に選んだものの、その花はハートのような花弁が可愛らしい。
名前はなんだろうか。
「その花は、サクラソウなのだよ。」
黒子君ではない、低めの声が後方から聞こえてきた。