第4章 あんていく
「成る程。
君はその子の為に、場所を探していたんだね。」
私が一通りの事を言い終わると
マスター…芳村、というらしいその人は柔和な笑みを浮かべた。
私は頷き、
半ば縋り付く様な様子でそういった場所がないか聞く。
手に汗が滲んだ。
これで断られたら、また振り出しに戻ってしまう。
私の様子とは裏腹に、ウタさんは私のことを面白がっている様だった。
「その友達どうやって生きてる?」
私の腕や膝に貼り付けてある正方形型の絆創膏を見つめながら彼は私に問うた。
その様子は分かっているだろう…そう思ったが、行ってきた事を口にする。
「ねぇ、見ていいかな。」
ウタさんは絆創膏を外してからそう言うが、
外された後では拒否するも何もない。
別に、血だけでは我慢しきれなくなり思わず噛んでしまって食い込んだ歯型の傷口があるだけである。
その傷を見て、芳村さんは少し驚いた様子であった。
「凄いね、痛かったでしょ」
ウタさんはその傷口を見つめながらそう言うが、
別にそうでもなかったのだ。
「痛くない」と言えば嘘になる。
しかし、私は彼の、喰種が人間を食す光景に見惚れていたのだ。
一種の興奮と言っても良い。
私は普通の人々と比べて、何処かネジが外れてるのかもしれない。
「友達をここに連れて来なさい。
私達が何とかしよう。」
芳村さんは柔和な笑顔のまま、穏やかにそう言ってくれた。
彼は私を信用してくれたらしい。
よかった。これでサヤの苦労も報われる。
ここ二週間ずっと私が彼を守らなくてはと気を張っていた。
彼もここに来れば、きっと安心できる。
私は心からの笑みを浮かべ、芳村さんにお礼を述べた。