第4章 あんていく
男は無表情ながら混乱している様だった。
「君、ぼくの言ったこと分かる?」
男は再度私に問う。
その問いかけに対して私は「でもきっと貴方はそうでしょう?」と答えた。
質問に質問で返すのはタブーとされるが、そんな事は御構い無しだ。
男は悩んでいるようだった。
人間に居場所を知られたら、追われることになるからか。それとも、殺すかどうか迷っているのか。
はたまた、ここから逃げ出す理由を考えているのか。
暫くして男は顎に指を当てるのをやめ、こちらに振り返った。
食べられないことを願いながら、私は縋るような目で彼を見つめる。
彼に熱意が伝わったのかどうかは分からないが、「おいで」と一言言い背中を向けた。
私はその背中を祈るような気持ちで追いかけたーーーー