第2章 安住の地を求めて
彼の舌が、皮膚を這う。
そのなんとも言えない感覚にぞくりと肌が粟立った。
喰種は人間を食べないと生きては行けない。
だから、私は彼にほんの少しだけ身を差し出している。
彼も最初は自分でなんとかすると言っていたが、彼の親がよく訪れていた自殺現場は今警察が見廻りをしていて、迂闊に近付くことが出来ずどうしようも出来なかった為に渋々了承してくれた。
肉を食べさせることは流石に許してくれてないけど。
彼は少しでも痛く無い様に、そっと刃を肌に当てる。
ぷつり、ぷつりと血が滲んでいき、そこへ口付けをした。
彼の唇が私の肩から溢れ出る血を啜る。
肩から零れた血はまるで惜しむ様に、舌で掬われた。
喰種が捕食する様子はどうしてこんなに、美しい。
どれくらいそうしていただろうか。
やがてサヤは私の肌から口を離すと、絆創膏を取り出す。
「ごめんね」
またそう言って私を見上げた。
確かに、私の肌は刃型の痕が何度もあるが、そんなものは暫くしたら無くなる。
そんなもので足りるのか、喉から出かかった言葉を私は止めた。
足りる筈がない。
そんな事は言わなくてもわかる。
しかし、彼は私を殺さない様、自分で制御している様だった。
このままではいけない。
きっと暴走してしまう。
若しくは、居場所を見つけないと、彼はこのまま弱って死んでしまうかもしれない。
両親に生かされた命を私が無駄にするわけにはいかないんだ。
私が居場所を探してあげないと。