第11章 あんていく:re
やがてカネキは一度部屋に戻ってくると、隣の部屋にヒナミちゃんを寝かせてくる為か、再び部屋を出て行こうとドアノブに手を伸ばしたが、それは空を切る。
誰かによってドアが開けられたからだ。
入ってきたのは西尾錦(ニシキ)だった。
多分、明日の新人を迎える準備?を手伝わされていたのだろう。随分と大掛かりなものだ。
ニシキは彼女を一瞥すると口を開いた。
「…お前、カネキの知り合いかよ?」
「はい」
「何があった」
一瞬、彼女の瞳が、身体が凍りついたような気がした。
空気の読めない奴。
私も聞きたくて黙ってた事なのに。
私はニシキの側に行き、そいつの腕をぐぐぐっとつまんだ。
思いの外痛かったのかニシキが呻く、と同時に声を張り上げる。
「何すんだクソ女!」
話題をなんとか逸らす事が出来たようだ。
ニシキが単純な奴で助かった。
「テメェが空気読めないからだろうが、クソニシキ!」
「ァア?それが年上に口を利く態度か?!」
「テメェは後輩だろうが!」
「チッ、話の通じねぇ馬鹿女だなァ!?」
と、私達が言い合いをしていると、戻ってきたカネキが近所迷惑だと釘を刺した。
隣の女も苦笑いをしていた。
「私…霧嶋董香。」
間を置き、隣に座る彼女に名乗ってみる。女は微笑んで自分の名前を名乗った。
「トーカでいいよ」そう言うと女…◯◯さんはまた笑った。弱々しい、思わず護ってあげなきゃと思う笑みだった。