• テキストサイズ

【東京喰種】chouchou

第9章 約束


人形抱きしめたまま5分くらい過ぎたところだろうか。
彼女ははっと我に返ったような表情をし、此方を振り返った。その鼻はほんのりピンクに染まっているような気がする。

「えへへ、ごめんね。
これ、サヤと小学生の時秘密で行ったゲームセンターで取った懸賞品なんだ。」
鼻を啜りながら、彼女は言葉を続けた。
「見つかったら怒られちゃうから、ここに隠そうって。
サヤが宝箱…持って来てくれて、ここに隠したの。それで、私が1人になっちゃったら掘り起こして持っててって。あの時は全然意味が分からなかったけど。」
「うん」
僕が相槌を打てば、彼女は恥ずかしそうに「馬鹿だよねぇ、私」なんて言いながら、はにかんだ。それから、ウサギを此方に翳して「注目!この青いウサギサヤに似てない?」なんて唐突に言い出すから僕は少し吹き出してしまった。
かなり不謹慎であったと気付き、気まずい気持ちで彼女を見たが、◯◯ちゃんの表情は相変わらず優しい。先程の彼女が嘘のように。

その時、ひらりと宝箱から紙切れが舞う。
反射的にそれを掴み広げてみると、その紙に一筆認められた文字が目に入った。

「この場所と共に在りますように」

僕がそう口に出すと、彼女は目を少し見開き顔を俯かせる。目線の先にはまるで眠っているように穏やかな表情をしたサヤさんが居る。

暫く彼女は足元の彼を見つめていたが、彼を持ち上げると、宝箱が埋まっていた場所にそっと置き土を被せた。


「ここに埋めてなんて欲しいなんて、変わってるよね」

彼女は今や土に隠れて見えなくなった場所を撫でながらそう言う。


そういう声は震えていて、切なくて、僕は彼女を堪らずぎゅっと抱きしめたいような、そんな心地を覚えた。

/ 34ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp