第8章 ぬいぐるみ
彼女に連れて行かれた所は林の中にある開けた場所だった。月の光が微かに射し込んで辺りを仄かに照らす。
彼女の方に目を向けると、優しい眼差しで少し土が盛り上がった場所を見つめていた。やがて、彼女は徐に口を開く。
「ここね。サヤと初めて会った場所なんだ。」
彼女はその場所に潜り込むと、手元を掘り進めた。
そこには一つの箱。
その箱を取り出すと、少し彼女は懐かしそうに目を細め、蓋を開ける。中には手を繋いだウサギの縫いぐるみが入っていた。それを取り出し、ぎゅっと抱きしめる。
「湿気くさい」
そう言って彼女は縫いぐるみに顔を埋めた。